広報誌 翠の輝(みどりのかがやき)コメントより
2022.07.01.
最近はコロナ禍に加えウクライナの悲惨なニュースが世の中を席捲し、我々の生活から笑みが遠ざかっているように思えてなりません。そこで今回は微笑みを誘う話をお伝えしたいと思います。
平成30年12月11日山翠苑で初めてEPA(経済連携協定)による介護福祉士受験生として来福したフィリピン人女性ジューリアンが3年間の研修を終え今年1月30日外国人留学生の合格率が38%という難関の介護福祉士の国家試験に挑戦し、見事に合格を果たしました。これは偏に彼女の努力の賜物ではありますが、彼女を支えた山翠苑職員が見せたホスピタリティ(親切な思いやり)も見逃すことは出来ません。
苑では彼女のために一軒家を借り、電化製品と家具、寝具、食器等の生活用品、それに自転車を用意しましたが、さらに全く未知の福井での生活に不安なく1日も早く慣れてもらえるようにと、生活アドバイザーを付けることにしました。幸い苑にはオーストラリアの病院でナースとして勤務経験のある英語の達者な職員がいたので、日本語の不自由なジューリアンのルームメイトを務めてくれました。
他の男子職員は夜を徹して車を走らせ翌日には横浜から彼女を苑に連れ帰ってきました。南国育ちの彼女が冬物の衣類を持っていないことを知った若い職員は自分たちのコートやセーター、マフラー等をプレゼントし、休日には車で自分たちが利用するユニクロや衣類のリサイクルショップへ案内し、買い物のサポーターをするようになりました。雪が積もると自転車が使えないので、車で食料品や日常品の買い物サポーターをする人、暖房用の灯油を届ける人、一泊二日の温泉旅行に誘った人と色々なサポーターが出てきました。苑長も正月には毎年彼女を自宅へ招き日本の正月料理でもてなし、家族ぐるみで彼女との親交を深めて彼女の孤独感を紛らわせる努力をしていました。最初は複数の職員が指導していた国家試験の受験勉強でしたが、2年目以降は専門学校が主宰する模擬試験が中心となり、この復習と習得には特定の職員が親身になって指導しました。今回の天晴な結果は本人のみならず多くのサポーターにも自分の事のような感動を与え、みんなで喜びを分かち合い山翠苑には今も笑顔が満ち溢れています。
社会福祉法人慈豊会 専務理事 田中 英幸